Vinylism
ジャニーズ好きなメタラー

初めて聴いた時はあまりピンとこなかった記憶があるのだが、いつしかこのアルバムの澄み渡った絶望の虜になっていた。それはまるで人生最後の落日を眺めているようで、おそらくこの先ここまでの美しさを感じる作品に出会うことはないだろう。生涯のベストアルバム。

バンドとしての困難な時期を乗り越えて完成された本作は、それゆえに今までにないほどのたくましさを放っており、それは未だに色褪せていない。 彼らのアルバムにしては名曲と駄曲の差が激しいのはご愛嬌。

『狂った太陽』から『COSMOS』までの彼らは恐ろしいほどの創造性の高さをみせていたが、中でも本作はその頂点だろう。ダブ、ジャズ、歌謡曲、ヘヴィロックなど様々なスタイルを飲み込んだ音楽性は今でも十分刺激的だ。

一時期の Mr.Children がもっていた重さを未だに引きずっている私にとって、彼らの作品でベストといえばこれだろう。 ミシェル・ファイファーでオナニーするという内容の "#2601" と、ささやかな幸せを歌った "ラララ" が並ぶ混沌具合もいい。

前作『Images & Words』の成功に甘んじることなく、進化という命題に真摯に向き合ったサード・アルバム。このアルバムがなかったら、おそらく活動が現在まで続くことなく終わっていたのではないだろうか。

この作品が出る前にトレント君にかけられた期待というのは、タイム誌の「アメリカで最も影響力のある25人」に選ばれたというだけでも、どれだけ異常なものだったのか分かるが、その期待を軽々超える高い音楽性と、それでいて以前よりも色濃い闇を提示した本作は見事という他ない。

初めて聴いた時はそのギターの音のでかさに驚いたものだが、今聴くとしょぼくて逆に驚く。それでも本作の価値が変わらないのは、ロックの普遍的な魅力をもっているからなのだろう。

このアルバムの後に出た、24金ディスクという無駄に豪華な仕様で発売されたライブ盤を評価する人の方が多いのだろうが、私としては本作の重厚さを支持したい。まぁその前にこの2人が笑顔で写っているという、なんとも奇妙なこのジャケットのためだけにも買う価値があるだろう（笑）

まぁアリバイ作りみたいなもんだ。